スウィート・スウィートバック~黒人版、父子鷹
今では、黒人の監督、主演、製作など珍しくもないが
1970年代当時では、考えられないものだった。
当時の映画では、黒人を筆頭に、メキシコ人、中国人など
マイノリティーに属する人たちのステレオタイプ的な描き方は、
白人が考える、まさにそれだった。

そんな黒人の描かれ方に不満を感じ、
黒人が納得する映画を作れないものかと、必死で考えていたのが、
ブラックシネマのゴッドファーザーと呼ばれる、
メルヴィン・V・ピーブルズ。

「ウォーターメロン・マン」の成功で、客を呼べる黒人監督と
なった彼だが、ハリウッドが求める映画をまた作りたくなかった。
そして、メジャーの映画会社のオファーを蹴って、
自主映画の製作に入った。
これが後に伝説と呼ばれる映画、「スウィート・スウィートバック」である。

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物語はシンプル。
娼婦に育てられた黒人青年
スウィートバックが、白人警官に
暴行を加えられていた
黒人活動家を助け、その白人
警官を殺害してしまう。
そして、そこから彼のメキシコ
までの逃避行を描いたもの。

今から考えるとどうって事のない
映画だが、時代は70年代。
白人に逆らい、黒人の自由を描く
映画など無かった時代。
とても危険な映画だった。

X指定も受け、成人映画扱いになった。
女性の裸やストリップのシーンも多く、主人公の
スウィートバックの特技は、何と「ファック」だからたいしたもの。

さて、この映画を見るとそれはそれでいいのだが、
この映画を作るに至った動機やら、製作過程など、
いかに「スウィート~」が出来上がったのかを描いた
映画を見てもらうと、より一層楽しめる。
それが、「バットアス」
メルヴィンの息子、マリオ・V・ピーブルズが監督、主演を務める。

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黒人が胸を張って見れる
映画を作りたい。
その一心で始めた「スウィート~」。
内容から中々出資者のめどが
立たない。
ようやく探した出資者もクランクイン
前に逮捕されたりと、前途多難が
待ち受けていたが、メルヴィンは
自腹を覚悟で製作を始めた。

案の定、最初からトラブル続き。
瞬く間に予算はオーバー。
金策に走りながら、撮影を行い、
一人7役もこなすメルヴィン。

疲労と睡眠不足で、失明の危機にまで陥る。
スタッフの不当逮捕やトラブルは続くが、
メルヴィンの全身全霊をかけた映画が
ようやく完成する。
しかし、内容から一般の映画館では上映出来ない。
B級映画配給会社を説得して、何とか全米で2館の劇場で
上映される事になった。
そして、これが伝説の始まりとなるのである。
(今や大御所であるアース・ウインド&ファイアーも
この映画のヒットで一躍脚光を浴びるのである)


「スウィート~」と「バットアス」、この二本を見ると
本当に、メルヴィン&マリオ親子の熱い思いが伝わってくる。
同じ映画好き、映画を作りたい者としては、
こんな凄い男がいたのかと、驚きと尊敬の念で
頭が下がってしまう。

メルヴィンがこの映画を作らなかったら、その後に
続く黒人映画、「黒いジャガー」や「スーパー・フライ」などの
誕生は無かったかも知れない。

「バットアス」で、メルヴィン役を演じるのが、息子のマリオ。
大ヒットした「ニュージャック・シティ」の監督を務め、
映画会社からは続編を要求されたが、それには応じず、
リアルな黒人の西部劇を描いた「黒豹のバラード」を撮る
あたりは父親譲りであろう。

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(左からメルヴィンと孫二人と息子のマリオ)

この映画、特に今、何かを追いかけている人に見て貰いたい。
映画に限らず、自分の夢を追い求めている人たちに。
自分の夢、思いを叶える為には、信念と情熱を持ち続ける事も
大事だが、叶える為には、犠牲にするものもある事も考えないと。
メルヴィンはこの映画を作る為に、仲間や家族を、果ては自分自身まで
犠牲にしてまで、作り上げた。

ここまでしなくては夢は叶えられないのか?
でも、そこまでかけた夢だからこそ、叶った時の喜びは、
言葉で言い表せないでしょう。

先の事を考えると不安で悩む事の多い僕に、
メルヴィンは「お前はここまでの覚悟があるか?」と
語りかけているように思えてならない。
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by fyamasan | 2005-11-28 04:59 | 映画 | Comments(0)

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